逮捕されたらどうなる?~逮捕から釈放までの流れと弁護士の役割~
もしもご家族やご自身が突然逮捕されてしまったら、一体何が起こるのか、どうなってしまうのか、不安で頭が真っ白になってしまうことでしょう。
この記事では、「逮捕から釈放までの一般的な流れ」と、その中で「弁護士がどのように皆さまをサポートできるのか」について、具体的に解説します。突然の事態に直面しても、落ち着いて対処できるよう、ぜひご一読ください。
1. 逮捕の直後:72時間の重要性
逮捕されると、警察署の留置施設に身柄を拘束されます。ここから、刑事手続きが本格的にスタートします。特に、逮捕から72時間は、その後の流れを大きく左右する非常に重要な期間となります。
警察での取調べ(逮捕から48時間以内)
逮捕後、警察は被疑者から事情聴取(取調べ)を行います。この取調べは、事件の真相を明らかにするためのものですが、被疑者にとっては精神的にも肉体的にも大きな負担となります。
- 黙秘権の行使: 黙秘権とは、話したくないことについて話さなくても良い、という権利です。取調べでは、話した内容が後に不利になる可能性もありますので、供述は慎重に行う必要があります。
(憲法第38条第1項、刑事訴訟法第198条第2項) - 供述調書作成: 取調べの内容は「供述調書」として記録されます。サインする前に、内容をよく確認し、事実と異なる点があれば訂正を求めましょう。
(刑事訴訟法第198条第4項、第5項) - 弁護士以外との面会制限(接見禁止): 逮捕直後は、家族であっても面会が制限される(接見禁止となる)場合があります。しかし、弁護士との面会(接見)は、時間や回数の制限なく認められています。
(刑事訴訟法第34条、第39条)
検察官への送致(逮捕から48時間以内、送致から24時間以内)
警察は、逮捕から48時間以内に、事件と身柄を検察官に送ります。これを「送致(送検)」と言います。
(刑事訴訟法第203条第1項、第204条第1項)
送致された被疑者は、今度は検察官から取調べを受けます。
検察官は、被疑者の取調べや証拠などをもとに、引き続き身柄を拘束する必要があるか(勾留の要否)を判断します。
2. 勾留の判断と弁護士の役割
検察官が「勾留(こうりゅう)の必要がある」と判断した場合、裁判官に勾留請求を行います。
(刑事訴訟法第205条第1項)
裁判官による勾留の判断
検察官からの勾留請求に対し、裁判官は被疑者と面談し(勾留質問)、勾留の必要性があるかどうかを判断します。
(刑事訴訟法第207条第1項、第61条)
- 勾留される条件:
- 罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること
- 定まった住居がないこと
- 証拠を隠滅するおそれがあること
- 逃亡するおそれがあること
- 勾留決定: 勾留が決定すると、原則として10日間、警察署の留置施設に拘束されます。やむを得ない場合は、さらに10日間の延長が認められることがあり、**最大で20日間**勾留される可能性があります。
(刑事訴訟法第208条)
弁護士が勾留阻止のためにできること
この勾留請求の段階で、弁護士の活動は非常に重要になります。
- 早期の接見・取調べアドバイス: 逮捕直後から被疑者と接見し、黙秘権の行使や供述の注意点についてアドバイスします。これは、不要な供述をして不利になることを防ぎ、勾留を回避するためにも不可欠です。
- 勾留請求に対する意見書提出: 検察官や裁判官に対し、勾留の必要性がないこと(逃亡や証拠隠滅のおそれがないことなど)を具体的に主張する意見書を提出します。
- 準抗告(勾留決定への不服申立て): もし勾留が決定してしまった場合でも、その決定に不服があるとして「準抗告」を申し立て、勾留の取消しを求めることができます。
(刑事訴訟法第429条第1項第2号)
勾留は被疑者の社会生活を大きく阻害し、精神的負担も大きいものです。弁護士は、一刻も早い身柄の解放を目指し、全力で弁護活動を行います。
3. 起訴・不起訴の判断と弁護活動
勾留期間が満期を迎えるまでに、検察官は被疑者を「起訴(裁判にかける)」するか「不起訴(裁判にかけない)」とするかを判断します。
(刑事訴訟法第209条)
不起訴となる場合
不起訴とは、検察官が被疑者を裁判にかけないと判断することです。不起訴になれば、事件は終了し、前科が付くこともありません。
- 不起訴の種類:
- 嫌疑なし: 犯罪の事実がなかった場合
- 嫌疑不十分: 犯罪の疑いはあるが、有罪と断定するだけの証拠が足りない場合
- 起訴猶予: 犯罪の事実は認められるが、情状を考慮して起訴を見送る場合(示談の成立などが大きく影響します)
起訴となる場合
起訴された場合、被疑者は「被告人」となり、刑事裁判を受けることになります。刑事裁判で有罪判決が確定すると、前科が付くことになります。
弁護士が不起訴を目指すためにできること
不起訴を獲得することは、被疑者にとって最も良い結果の一つです。弁護士は、不起訴を目指して以下のような活動を行います。
- 被害者との示談交渉: 被害者との示談交渉は、不起訴(特に起訴猶予)や減刑に大きく影響します。弁護士が間に入ることで、被害者感情に配慮し、適切な示談交渉を進めることができます。
- 有利な証拠の収集: 被疑者にとって有利な証拠(アリバイ、第三者の証言など)を収集し、検察官に提出します。
- 意見書の提出: 検察官に対し、被疑者の反省や再犯防止の努力、家族の監督体制などを説明する意見書を提出し、不起訴処分を求める働きかけを行います。
4. 釈放のタイミングと種類
逮捕された方が身柄を解放されるタイミングは、いくつかあります。
- 勾留請求却下・準抗告認容による釈放: 勾留請求が却下された場合や、勾留決定に対する準抗告が認められた場合に釈放されます。
(刑事訴訟法第207条第1項、第429条第1項第2号) - 不起訴処分による釈放: 検察官が不起訴と判断した場合、直ちに釈放されます。
- 保釈による釈放: 起訴された後、保釈保証金を納めることで、一時的に身柄を解放される制度です。弁護士は、保釈請求を行い、保釈条件の交渉などを行います。保釈が認められれば、裁判が終わるまで自宅で過ごすことができます。
(刑事訴訟法第88条以下)
5. 逮捕されてしまったら、すぐに弁護士にご相談ください
逮捕されてからの初期の対応は、その後の結果を大きく左右します。
弁護士は、
- 逮捕直後から被疑者と接見し、法的アドバイスを提供します。
- 不当な取調べから被疑者を守ります。
- 勾留の阻止や早期の釈放を目指し、法的な手続きを進めます。
- 被害者との示談交渉を通じて、不起訴や減刑を目指します。
- 刑事手続き全般において、被疑者の正当な権利を守り、最善の結果を得られるよう尽力します。
突然の逮捕は、ご本人にとってもご家族にとっても、想像を絶する不安と混乱をもたらします。しかし、適切な弁護活動を受けることで、状況は大きく変わり得ます。
当事務所では、刑事事件に関するご相談をお問い合わせフォームから24時間受け付けております。ご家族が逮捕された、あるいはご自身が警察から連絡を受けているなど、少しでも不安なことがあれば、ためらわずにご連絡ください。